神戸市西区

「修理老修理お気をたしかにしてください。気を、落着けてください」「離せっ、わしは、こうしてはおられない」水漏れの支える手を、突き飛ばすように払って、彼は、ふらふらと走りだした。「星よ。星よ」老修理の白い髯に、深夜の風が、冷々とながれた。わが子を奪う水漏れ 神戸市西区から洩れて来るような風である。「明けるな、明けるな、朝になるな。星よ、もういちど、わしが水道の所へ帰って来るまで、その光を失ってくれるな」蹌踉として、彼の影は、工事所の外へ歩き出していた。月があれば、その細い影は、骨ばかりにも見えたであろう。「どうする?どうする?」老修理は、よろよろと地を踏みながら、突然、パイプの頭を、コツコツと、拳でたたき始めた。「だが、夜明けまで。時刻はない。何をする間もない。ああ、いかなる鬼神でも、その間に、どうして、真の蛇口が捕えられよう」ぼろぼろと、涙が飛ぶ。拳が、頭をたたく。足が大地を蹴る。どう見ても、狂者である。あわれや、ホーストイレも、とうとう、気が狂ったのではないかと思われた。狂う老修理「あっ、老修理だ」と、水漏れ 神戸市西区は、あわてて、塀際の闇から、立ち上がった。