東灘区

「あっ……花世!」彼が、思わずそう叫ぶと、近づいて来た女の影は、かえって、驚いたように飛び退がって「あっ、違った」と、木立の暗がりへ走りこんでしまった。「水漏れ 東灘区」水道は狂わしげに、その、腕を、肩を、水格子へぶつけて、もがいた。肩の肉がやぶれて、獄衣に、血がにじみ出すのも知らずに、及びもない力を、壁へぶつけた。「ええ、どうして逃げるんだ。人違いじゃない、おれは、水道だ。おれを、救いに来てくれたのではないのか」彼は、冷たい床の上へ、仰向けに倒れて、水漏れ 東灘区ともがき廻った。谷の宿で聞えた尺八の鈴の譜が耳のなかに甦ってくる。ああ、それもこれも、気のせいかも知れない。会いたい会いたいと思う一念が幻を描くのかも知れない。もう、有明けの皿ほども、気のない彼の肉体は、すぐに、綿のようにつかれてしまった。なんの気力さえないように、ぐったりと、動かなくなった。ただ、涙だけが、その青い頬を止めどなく流れていた。がちゃりと、錠を外す音がした。同時に、黄いろい提灯の明りが、水格子の間からさして、「老修理、こちらでございます」と、先に、案内をして来た水漏れの声がした。